第217回 聖地
誰かが大切にしているものを自分の征服欲のために踏みつけていいのか。
今回はそんなお話です。
ウルルって知っていますか?
日本ではエアーズロックと読んだ方が通りがいいでしょうか。
世界最大級の一枚岩として世界遺産登録されているオーストリアの山です。
この山の登山が2019年に登山道が撤去されてできなくなります。
なぜでしょうか。
アボリジニの聖地
オーストリア大陸は欧州の探検家が来るずっと以前数万年前から原住の方達が住んでいました。彼らを総称してアボリジニといいます。
乾燥した土地に木々が生い茂る中、巨大な岩山が見えます。
彼らは文字を持たず、決まった人に、男女別のさまざまな文化を口伝や壁画で伝えてきました。そんな舞台であり聖地がウルルなのです。
差別と登山道
観光資源として目をつけられたエアーズロックは鎖をつたう危険な登山で有名になり、アボリジニの人たちはここからいっとき消えてしまいます。国立公園になったからです。ウルルには鎖の登山道が打ち込まれました。
南アフリカのアパルトヘイト撤廃などの流れの中、運動の末アボリジニに土地を返還することになりました。
観光資源との狭間で
国立公園としてアボリジニから借用する形となったため国立公園の中にアボリジニの村がありウルルも彼らの所有物です。自然と文化を知る機会を彼らは与えてくれていますが、登山はして欲しくないと思っています。登山はしないでとのおねがいも日本語でもゲートの看板に明記されています。日本語が最初です。登山ツアーを続けているのが日本だけだからです。ガイドもこのような背景と登山の危険性を繰り返し話してくれます。
みなさんその場に行って登りますか?
私は神社の屋根に登るような、御神体を足蹴にするように思えたのです。